SPACE PONCH, a legendary lounge unit
-Interviews with MATSUMAE Kimitaka-

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スペースポンチ・アルバムリリース情報


スペースポンチ・アルバム発売記念
「松前公高メール・インタビュー」
インタビュー・文:ウエハラ

松前公高プロフィール

千葉大学のサウンドクリエイト研究会出身。この時は中ザワヒデキなどと「耳から回虫」というバンドでノイズ系のサウンド。ライブを行っていた。
その後、「きどりっこ」を結成。インディーズでアルバムを発表するが、同時に岸野雄一、常磐響、MintLeeと共に「コンスタンスタワーズ」でも活動。「パール兄弟」の前座などのライブアクトを行う。
その後、ライブハウスで知り合った「もすけさん」の山口優と「エキスポ」を結成。この時点で「きどりっこ」は脱退。「エキスポ」はアルファレコードのGMOから「エキスポの万国大戦略」でデビューする。その後、GMOがレーベルごとポニーキャニオンに移籍したサイトロンでゲーム音楽のアレンジなどを中心に個人活動を行い、「S.S.T.BAND」などのゲームミュージックライブなどに深く関わる。「ハイポジ」の結成時のメンバーでもあるがこれはデビュー前に脱退。
マニピュレートのスタジオ、ライブワークも多く、東京少年、松岡英明などのバンド や今堀恒雄、野呂一生、水谷紹などのマニピュレートを行う。
トランソニックレコーズからソロアルバム「Space Ranch」、ソニーからプレステソフトのサントラでもある「Kileak the Blood,Soundtracks & Remix」を発表。テレックスのリミックスアルバムやクラフトワークトリビュートにもリミックスで参加。最近もゲームの音楽を中心に制作活動を行っている。

スペースポンチを語る

スペースポンチのメジャーデビュー・アルバム「THE WORLD SHOPPING WITH SPACE PONCH」発売おめでとうございます。

松前:ありがとうございます。やっとという感じですね。

よく聞かれると思うんですが、スペースポンチが今までアルバムをリリースせずにライブ活動のみだったのはなぜですか?

松前:いや、むちゃくちゃ単純な話ですよ。出してくれる所がなかったというただそれだけ(笑)。別に何もしなかった訳じゃなくて、いろいろ話はあったんですけどね。80年代にも一度、TATI SUITEはメジャーでCD化する為に動いていただいた事はあったんですが実現しなかった。92年の時もそういった行動はあったんですが、結局だめだった。

なるほど。ではスペース・ポンチが伝説のラウンジ・ユニットと呼ばれることについてはどう思いますか?

松前:環境音楽って言葉が80年代にもてはやされた時は、何でも環境音楽と言われてましたよね。BGM的なものまで何でもね。そういう時にスペースポンチやエキスポとは別でソロでやっていた音楽も一種の環境音楽があったんだけど、それを人に説明する時、、、例えば大学時代の友人などにね、、、「いわゆる喫茶店でかかっている様な音楽じゃなくて、もっと無視出来る音楽、自然に流れる様な音楽」といううような言葉を使う事になる。この言葉には「喫茶店のBGMはうざったい音楽だ」という意味も含まれていますよね?
でもその一方でスペースポンチ(当時はコンスタンスタワーズと名乗っていたが)は、80年代からラウンジやってた訳だけど、じゃあこれが喫茶店のBGMの様な音楽だったかというとそうではなかったし、そういう説明も出来なかった。まあ、ラウンジという言葉がなかったというのもあるし、音質感、楽器などがラウンジという様な事でもないし、ただ古い映画音楽をシンセでアレンジして演奏していた、というのがあっただけなんですけどね。僕のまわりには映画音楽が好きな人がたくさんいたのに、何故かライブハウスやバンドの世界では映画音楽をやる人はいなかった。映画音楽がステキだと言われる様になったけど、そんな事は昔からあたりまえの事だったので、あまりピンとこない。いろいろ再発されたのは嬉しい限りですね。

スペースポンチ内のメンバーの役割分担はどうなっているんでしょうか。

松前:岸野が脳、MintLeeが心臓、常磐が顔、松前が手足、といった感じかな。つまり岸野が頭の中で考えたりした事をMintLeeがアレンジしたり、MintLeeや僕のオリジナルの曲もいくつかあるけど、常磐はビジュアル面を担当したり、岸野と雑談したりするのが役割というか、レコードはマニアックにすごく持っているしDJもやってるし、そういう話題がやる曲に結びついたりする。ではシンセやサンプラー、楽器、録音関係を全てやる事になる。具体的には岸野とMintLeeの作曲、編曲データを、僕が家で具体的に楽器で音にしたりデータをなおしていく作業という事になります。

そうするとこれは岸野さんか常磐さんにすべき質問かもしれませんが、モンドミュージックの魅力とは何でしょうか?

松前:モンドの定義はかなりむずかしいでしょう。我々がモンドと言っているものはこの時代から振り返って、他人事として見ているからモンドとなっているという条件がある。つまり「当時、本人達」はモンドをやろうと思ってやってた訳じゃないよね。これがパンクやヘビメタという様な定義とは違うと思います。つまり完全にリスナーの作った定義でしかない。おそらく「モンドやろう」なんて作ったものは、その制作意図の時点で既にモンドではないのかもしれない。それに聴く人によってその人の中のモンドは全然違っていてもいいし。だから僕も「これはモンドだから」といって音楽を聴く事はないし、自分でもそういうものをやっている意識とかあまりないですね。ただおもろいものが好きで、へんなものが好きで、いい音楽が好きなだけなんです。

コンスタンス・タワーズがスペース・ポンチになったのは、田中雄二さんが企画した史上最大のテクノポップイベントへの参加がきっかけだそうですが、コンスタンス・タワーズとスペース・ポンチの違いを一言でいうと何ですか?

松前:活動の経緯を紹介すると、まずシンセ中心のインストバンドでコンスを4人でやっていたんだけど、徐々にコンスが岸野の歌ものになっていった。そして、今堀恒雄(G)、あらきなおみ(B)、外山明(Ds)、西田ひろみ(vl)といったゲストを迎えて生のライブをやっていく様になったんです。そうなるとキーボードは4人もいらないよね?。ただ、コンスはやはりこの4人というのがあったので、岸野は歌ものを「岸野雄一」(ヒゲの未亡人)で展開させていく事になる。実際これには常磐、松前は参加していません。その中で、田中さんから「昔の打ち込みコンスもみたい!」とのお誘いがあって、じゃあ復活させようと。でもバンド名は既に歌モノのコンスを知る人の方が多くなってしまったというのもあって、この再結成4人インストのコンスはスペースポンチという名にしたんです。

今度スペースポンチのアメリカ発売も決まったそうですが、スペースポンチのアメリカのマーケットに対する戦略とかあるんでしょうか。

松前:これは西海岸から攻めるという事ですね(笑)。何故かって?。アメリカ行くときヨーロッパ経由じゃないでしょ。太平洋経由でしょ。近いから。当然西海岸から上陸ですよ。いや裏をかいて東海岸に行ったらびっくりするかな?(笑)。 そういう戦略じゃないよね。大戦略じゃないんだから。そうですね〜。じゃあ歌を全部英語にして、ディスコビートにして、ラジオ用に全曲3分にして、ジャケットはキノコ雲にしようかな(笑)。

まあ、音楽に国境はないっていいますからね。ところで、今回のアルバムで過去にレコーディングしたトラックをほぼ使ってしまったわけですが、セカンドアルバムの予定はどうなっているのですか?

松前:売れたらみんな考えるだろうけど。今はまだないです。やりたいんだけど、各自それぞれの活動もいそがしいから、どうなるかな?。

レコーディングではたくさんのビンデージシンセを使ったと思いますが、それらはどのようにして作業が進められたのですか?

松前:ビンテージシンセのブームに限らず僕はずっとシンセ買ってきた訳だけど、その中で徐々に機材を差し替えて行きました。当時の僕らの気持ちとしては、絶対にライブのその場所でシーケンサーが動いてなくてはいけない、というのがあったんです。だから全てのシンセが同時にMidiで鳴る必要があった。ところがTATISUITEみたいにべらぼうな楽器数の曲もあって、それを振り分けるのがかなりハードだった。実際には全てがビンテージシンセという事は全くなくて、必要な音だけビンテージで、それもサンプラーに入れてという事が多かった。でないと、とてもじゃないけどライブじゃ管理出来ない。しかも自分達で持ちはこばないといけないから。それでもProphet5やMONO POLYなどは絶対持っていってたけど。

器材のことなんですが、岸野さんが使っているボコーダーはなんという機種で すか。

松前:時代によっていろいろ使いましたよ。コルグのDVP-1、BOSSのSE-70、そしてレコーディング時はEMSのVOCODER 2000とSEEKERSのVOICE SPECTRAですね。現在のライブでも SEEKERSのVOICE SPECTRAを使用しています。

スペースポンチはライブがとても魅力的なのですが、現在ライブで使っている映像はだれがセレクションしているのですか?

松前:あれは常磐くんが集めて編集したものですね。特に曲にあわせている訳ではないんだけど、なんかあってたりしておもしろいですよね。

DRIVE TO 2000でのライブがレコーディング終了後初のライブだったと思いますが、新たな収穫はありましたか?

松前:新たな変化といえば昔は全部シーケンサーでやっていたんだけど、CD-Jなどを使ったスタイルになった事かな。

松前公高を語る

ここらへんで松前さん個人の質問に移ります。松前さんというとEXPOでの活動が知られていますが、EXPOで目指そうとしていたものは何だったのですか?

松前:エキスポもまさにモンドだったのかもしれないね。つまり、おもろいもの、へんなもの、勘違いしてるものなどが昔から好きだったんですよ。今エキスポをやるとなるとどうなるんだろう。87年の時点ではアナログシンセの再発見なんてまだなくて、しかもちょっとコンピューター過信の時代がやってきつつあったのにまだまだダメな時代、ちょうど中途半端な時代だったんですよね。いよいよ未来時代がやってきたのに全然便利じゃないじゃないか!というのがあって、それに焦点をあてた。機械が間違ったり、エラーを正確に反復する、などといった事を音にしたんです。エキスポがチープなアナログシンセの音が多かったのも、デジタルシンセよりよっぽど音いいぞ!ってずっと思っていたから。別にアナログシンセが再評価されようがされまいが、それはもう昔から明らかだった。ヤマハのDX7は確かによかったけど、もうその後はアナログシンセにしか興味なかったですね。実はあの時代も結構いろいろ出てたんですよ。Prophet600とかMatrix 1000とか。

松前さんはゲームミュージックをたくさん作られていますが、ゲームミュージックのおもしろさはどこにあるのでしょうか?

松前:ちょうど家庭用ゲームが始まった頃で、ファミコンだったんだけど音がチープでいいでしょ?。しかも3声しか出ない。今ならゲームボーイやワンダースワンを想像していただけるとわかると思うけど。80年代後半でデジタルに飽き飽きしていたから、これが実に魅力的だった。しかもNECの9801などでエディターで音を書いていく(ワープロの様に音符名を書く)のも魅力的だった。 それに当時はまだ「おもちゃ」の領域だったけど、必ず10年後、これは家庭用のコンピューターや一大エンターテイメントになると簡単に予測がついた。今やムービー画面もすごいし、映画よりずっと大きなマーケットになってますよね。音楽を作る方としては楽にはなったけど、逆に特殊性がなくておもしろくなくなったとも言えるけど。

松前さんは千葉大サウンドクリエイト研究会のご出身とききましたが、最近ではスカイフィッシャー、DEADCOPY、千葉レーダーなど活躍していますよね。

松前:そうですね。ほんとに嬉しい限りです。僕が18歳、一年で大学に入った時に創設時の一年生だったんです。学生が一番集まる広場で昼休み突然ノイズのライブやったり、大学祭で延々野外ステージでノイズ出したり、いろいろバカな事やってましたよ。そこを拠点にライブハウスなどに出る様になってその延長で現在の友人などに出会っていったんです。その後もカワイ楽器やセガに就職する卒業生もいたりして、現在は上記のバンドが活躍中という事なんですが、これからもどんどんがんばって欲しいし、僕もがんばらねばね。スペポンのメンバーと知り合ったのも実は亀戸に住んでいる時で、総武線には何かそういったものを生み出す土壌があるのかな?僕自身は大阪から出てきたんだけど。  

最近気に入っているシンセ、器材、または音楽ソフトがあったら教えてください。

松前:WindowsのオーディオボードとソフトなんだけどCreamw@re社のPulsarがやはりここ数年ではダントツでおもしろいですね。ソフトシンセなんだけどDSPを使っているのでストレスなく、いろんなシンセやエフェクターのソフトがどんどんインターネット経由で入手出来る。ハードウェアの楽器の場合、手に入れた時が一番新鮮でどんどん使い慣れて、あきていくでしょ。それがハードを持っているだけで、どんどん新しいのが手に入るので常に新鮮な気持ちで使えるのがいいですね。

インターネットというと、ホームページなどは?

松前:やってますよ。もう4年ぐらいになります。でも音楽の発信より、文字情報が多くて、アジア旅行記などが膨大にあります。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~matsumae/

MP3などは如何ですか?

松前:もちろん興味はありますが、じゃあ実際MP3をダウンロードする人がどれぐらいいるか?って考えたら、実はまだまだ重いですよね。ホームページでもそうだけど凝ったものつくって重いより、シンプルで軽い方がいい。そういう点では時代がもう少し簡単にダウンロード、視聴出来る環境になってからの方がいいと思っています。それまでは勉強。そうそう、ちょうど先日、福間くん、MOMOくんなどと某雑誌の特集でMP3のエンコーダー、MP3プレイヤーの音質差の試聴会をやったんですよ。かなり違いがあっておもしろかったですね。

松前さんの最近のお仕事や作品などありましたらご紹介ください。

松前:今年発売されたのはゲームのものばかりですね。Beatmania append Gottamixにコラージュテクノという名前で曲を書いているのと、あとはいくつかのプレステのゲーム。ライブでは成田忍さん、上領亘くんが中心になってやっているレノベーションウェーブというイベントでguniw toolsのメンバーや上領くんとバンドを作ってライブしたり、GLAYのサポートドラムをやっているTOSHI NAGAIとシーケンスベースとドラム中心の人力テクノ系のライブもやりました。

では最後に何かありましたら、どうぞ。

松前:スペースポンチをよろしくね。

本日はどうもありがとうございました。

松前:こちらこそ、ありがとうございました。


webmaster: UEHARA Ken

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